日本以外のルーツを持つ12人の日本語話者の生い立ち、苦境、乗り越えた方法について、インタビューをまとめた本。
最近、人に歴史あり、という作品が好きだ。街で言葉を交わすこともなくすれ違う人にも、その人を生んだ親がいて、その年齢までその人は生きてきた。そうした当たり前だけれど、とても尊いことが世界に溢れていることに、ぼんやりと感銘を受けたりする。袖触れ合うも多生の縁、他人には親切に、を改めて思うことも多い。
一方で、大虐殺や差別、貧困など、とても悲しいことも数え切れないくらいこの世界にはあるのだけれど。
著者自身は6カ国育ちで、相当な苦労があった様子が少し書かれている。ルーツに起因する厳しい生活状況、差別、居場所が見つけられない、そしてロールモデルがいないこと。
ロールモデルとは、行動や考えの模範としたい人。手本にしたい人物。(明鏡国語事典)という意味だ。親がサラリーマンだったから、子がサラリーマンになったと言う場合、子は親をロールモデルにしたと言える。
しかし、親が国際結婚であったり、海外から日本への移住であっても、ルーツの違いで生まれる外見の違いや、生活様式の違いなど、日本(特に東京以外の地方)では排他的な扱いを受けがちだと私も感じるところが多い。親を子が自身のロールモデルにすることも難しかったと思われる。
こうしたルーツの違いを持つ人が日本の地方で暮らすことは、一昔前なら相当な苦労があったと思われるし、この本の中でもたくさん語られている。
ロールモデルがいればよかったのに……という著者の思いが込められた、そしてインタビューに応えた人たちもきっと同じ思いで、これから未来へと漕ぎ出す若者のロールモデルのひとつになれればと、包み隠すことなく話された様子が読み取れる。
ロールモデル不在の中、自分で試行錯誤して茨の道を進み一定の成功を収めた人の話が、未来の日本あるいは世界の平穏を願って作られた本であることは間違いないと思う。
一方で、こうした成功した人たちの後には、何千何万のまだ成功に至らない人たちがいることは忘れるわけにはいかない。
また、この本はインターネットがまだ存在しなかった時代のお話しも多くあるように読めた。今はSNSで社交して、自分のロールモデルを探しやすくなった時代だとは思う。
それでも、この本がさまざまな人に広く読まれて優しい世界に漸近していくことや、ロールモデル不在の中を生きようとしている人にも届くことを願う。


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