「a drawing book」感想

20XX年に東京で開催された、架空の展示で制作された架空の図録です。

感想

画や写真と文章のバランス、あるいは過去や現在と未来の時間の行き来が、ゆらぎつつ相補しているようで心地よく読めました。

20XX年という幅のある表現は、未来はこうなっていて欲しいという内容なのか、過去はこうであったという内容なのか、読み方は読み手でいろいろ変わりそうです。

ドローイングで印象に残ったのは台所の後ろ姿です。全体的な雰囲気に対する優しい視線が向いている気がしました。

写真で印象に残ったのは、すこしゆらいでいる水面と水面から顔を出しているパイプとワイヤの写真。他のドローイングとつながりがある写真に見えて、この本の雰囲気を決めているように感じられました。

文章は天女の話が面白かったです。添嶋さんらしいと書くと紋切り型ですが、ここは文章の方にゆらぎがよった印象がありました。

妄想

直線と波のゆらぎが多く描かれていますが、線としての曲線があまり描かれていないのは、何か理由があったのか気になりました。

直線的に進む伝播に回折やカルマン渦のような複雑さが加わると、どういった本になるのか見てみたい気持ちもあります。

要望

これは作り手の美学によるところだと感じていますが、ページの番号がふってあると、最後まで読んだときに読み返しやすくなると思いました。ただし一般的な図録には番号をふらないのかもしれません。

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宮崎竣輔(画・写真)/ 添嶋譲(文章)「a drawing book」(言葉の工房, 2023)

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